| 
 | 
  | 
 
| 19.鳥獣害対策 | 
 
 | 
 
1) 野ネズミ対策  (1) 野ネズミの種類  わが国に生息するネズミは2亜科14種で、このうち野ネズミと呼ばれるのはハタネズミ、アカネズミ、ヒメネズミ、ヤチネズミなどである。この中でりんごなどに大きな被害を与えるものは、主にハタネズミ(頭・胴長11.5cm、尾長4.0cm)でドブネズミの約半分の大きさである。  (2) 野ネズミの生態  ハタネズミはトンネル生活が中心で、土手などの緩やかな斜面の草むらに長いトンネルを掘り、その中央部にワラや枯草を集めて巣を作る。繁殖期は春の4〜6月、秋の9〜10月の2季節で、1回に出産する数は3〜6匹である。妊娠期間は21日で、出産するとその日のうちに交尾する。各繁殖期に3〜4回産むが、春より秋の方が多いとされる。生まれた雌は生後50日で繁殖が可能となる。  (3) 野ネズミの被害  野ネズミの被害を受けやすい園地として、草生、敷革、敷わらなどを行っている園地、水田転換園、山林および原野に隣接した園地、もしくは新たに山林および原野を造成した園地などが上げられる。被害を受ける時期は冬から早春にかけてであり、特に早春の樹のまわりの雪が融けはじめたころに多い。普通台の樹の成木よりも栽植1〜3年目に苗木、もしくは若木に被害が多い。また、わい性台樹では成本になっても被害が多く、地際部の樹皮を食害し、ひどい場合は枯死する。  (4) 野ネズミの防止対策  野ネズミの防止法には、回避、忌避など野ネズミを殺さずに被害を避ける方法と、殺そ剤などを使って野ネズミの密度を減らす直接的な方法の2つがある。生息密度が極めて低い場合は、前者の方法だけで防除が可能であるが、密度の高い場合は甚大な被害を受ける。したがって、基本的には、生息密度低下のための殺そ剤の投与などと、回避、忌避法を併用した対策が望ましい。  ア 被害の回避  (ァ) 園地が汚れていると野ネズミの侵入が容易になり、被害を受けやすいので、園地をいつも清潔にすることが大切である。特に、野菜などを作付けしている園地では、積雪前にそれらの残渡をきれいに片づけ、清耕にしておく。  (ィ) 草生、敷草などを行っている場合は、野ネズミが巣を作り易いので積雪前に幹の周囲を清耕にして野ネズミの巣を壊すか、または巣を作るのを防ぐ。  (ゥ) 苗木および若木の場合は、刈り取った草を敷草すると夏でも被害をうけるから、7月中旬以降は敷草を除き根元を清耕にする。  (エ) 樹幹に対する野ネズミの害は成木よりも若木に多い。したがって、苗木および若木では晩秋に地上1mくらいの高さまで(積雪の多い所ではさらに上まで)樹幹に割竹、杉菜、金網、石灰窒素の空袋、合成樹脂のプロテクターなどの被覆材料を巻きつける。  (ォ) 忌避剤による防止  @ 樹幹への処理  アンレスを使用する場合は、10倍液を樹幹部へ散布又は塗布する。また、べフラン塗布剤を使用する場合は2倍液を散布するか原液を塗布する。  A 樹冠下への処理  根雪前、樹冠下半径約50cmの範囲にネマモール30粒剤100g/樹又はフジワン粒剤200g/樹を均一に散布し、表土とよく混和する。なお、ネマモール30粒剤は混和後鎮圧する。  (ヵ) 2月以降、樹の回りの雪が早く融けると特に加害されやすいので、この時期には数回、樹の回りの雪をよく踏み固めておく。垂れ下がって雪に埋まっている枝先は掘り出しておく。  イ 野ネズミの駆除  野ネズミの繁殖期は春と秋が主であるので、晩秋と早春の2回の駆除は効果がより大きい。しかし、夏期に大繁殖をみることもあるので、このような場合には、当然夏期の防除が必要である。野ネズミは繁殖力が旺盛で活動範囲もかなり広いので、共同で広範囲にわたって一斉に実施することが必要である。  (ァ) 殺そ剤による駆除  現在、市販されている殺そ剤の種類はいろいろあり、各々の特性をもっている。どの薬剤も野ネズミの体内に入った場合にのみ効果を現すので、野ネズミがよく食べるような方法をとらなければならない。もし、毒餌の食いつきが悪い場合は、殺そ剤を含まない餌を与え、2〜3日喫食させた後に毒餌を置けばよい。  @ 殺そ剤の使用方法  @ 点状配置法  樹の根元や樹列間に一定問隔で殺そ剤--を適宜配置して防除する。  A そ穴投入法  野ネズミの穴や通路に殺そ剤を投入して防除する。土手や園内の雑草が茂っている所に多いので探し出して行う。  B ブロック法  雑草や稲わらなどを用いて餌場を作り、そこに殺そ剤を置いて防除する。設置場所は野ネズミの侵入方向に沿って設け、防止ラインを作るようにする。その際、侵入道路やそ穴の上に設置すると効果的である。餌場の作り方は雑草や稲わらを敷き、そこに殺そ剤を置き、その上に小枝などで高さが5〜6cmくらいの空間を作り、さらに稲わらなどで覆う。1か所50〜100gの殺そ剤を置き、生息密度によって適宜増減する。  A 殺そ剤の種類  @ ダイファシン系粒剤(商品名ヤソヂオン)  野ネズミの体内に蓄積されて血液の凝固を阻止する作用があり、内出血して死ぬ。  A リン化亜鉛粒剤(商品名ラテミンリン化亜鉛1%、リン化亜鉛10、Z。Pなど)  人蓄に対する毒性が少なく、現在広く使用されている。野ネズミが死ぬと体内で無毒となる。また、使用が簡単で袋入りの粉餌となっておりそのまま使用できる。  B タリウム粒剤(商品名固形タリウムS「大塚」、メリーネコ夕リウムなど)  野ネズミの体内に蓄積されて毒作用をおこす。なお、モノフルオル酢酸塩剤は二次公害の恐れがあるので使用しない。  (ィ) ワナなど利用による駆除  @ 金網及びダンボール製の生け捕りワナやバネの力でネズミを捕らえる弾きワナなどを園地に仕掛けて捕殺する。  A 上面に直径10cm程度の穴をあけた石油缶を地上5cmくらい出るようにして土中に埋め、缶の中には館を入れ、缶の上にワラを敷き、その上に、缶の穴が積雪でふさがれるのと缶に雨水が入るのを防ぐため、屋根をかけておく。なお、缶の中に水を入れて落ちた野ネズミを溺死させる方法もあるが、野ネズミが腐敗するため後始末がやっかいである。  ウ 野そ被害樹の処理方法  (ァ) 樹幹を食害された場合、樹皮が幹周の1/4以上残っているものは早めに塗布剤を塗布するかテープを巻いてカルスの形成を促す。それ以上食害されたものは植え替える。ただし、地際付近の樹皮を全体に一周食害された場合は盛土を行い、カルスの形成を促すと同時に、樹齢により可能なものは寄接ぎを行う。  (ィ) 根部の食害が考えられる場合は、早めにその被害程度を確認し、ひどいものは植え替えを行う。 | 
 
 | 
 
2) 野ウサギ対策  野ウサギは狩猟獣のため捕獲するには狩猟法の適用をうけ、毒殺は法律で禁止されているので、防止対策として忌避する方法のみである。このため現在は、なかなか効果的な防ぎ方はないが、次の方法で被害を防ぐ。  (1) 積雪の少ない所では、地表40〜50cmの幹のまわりに金網などを巻く。  (2) 市販忌避剤のアンレス10倍液を樹幹や主>枝などに塗布あるいは散布するか、べフラン塗布剤の原液を塗布あるいは2倍液を散布する。  (3) 被害のひどい所では、費用がかかるが積雪の上に70cm出るように、金網の垣を園地の外周に作って侵入を防ぐ。 | 
 
 | 
 
3) 野鳥対策  ヒヨドリ、ムクドリ、カラスなどの被害の大きい所では防鳥網を使用する。これらの鳥に対しては、防鳥網の網目が35mm以下の網であればよい。被害の大きい品種が集団で栽植されている場合は、その部分について全面を被覆するように網をかけ、外周は地表まで網をたらして害鳥の侵入を防ぐ。 | 
 
 
 |