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4.整枝勢定 |
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樹形は細がた紡錘形を基本とし、樹形づくりに当たっては次の事柄を念頭に作業を進める。結実初期までは主幹を丈夫に育て、主幹上に良い側枝を十分着けることに心がける。 〇主幹を頑丈に保ち、目標の樹高を維持する。 〇側枝を20〜30本確保する。 〇結果部位は側枝の基部から枝全体にわたって確保する。 〇樹幅は所定の距離内に納める。 ○樹勢を健全に維持する |
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1) 1年生(接木翌年苗)の剪定と管理 〔休眠期〕 生育の良い苗木(長さ1.5m以上で根量も十分)は地上120cm位で切返しをする。これより貧弱な苗木は短かめ(剪去する長さは地上部全長の1/4程度が目安)に切る。
〔生育期〕 ア 地表から50cm以下の芽は発芽伸長し始めたら、基部から摘みとる(5月〜7月)。 イ 最上位の芽が15〜20cmくらい伸びたとき、その下の1〜2芽(ときには3〜4芽)から発出した新梢は基部を少し残して剪去する。それによって、下位に発出角度の緩い側枝が多く出やすくなる(5月下旬〜6月上旬)。 ウ 側枝が少ない樹には、心枝あるいは主幹上の側杖の足りない部位の葉にビーエー液剤を散布する(6月上〜下旬、第U-73表ビーエー液剤の使い方参照)。 エ 雪の多い地帯では雪害防止のため、雪に埋没する高さまでの枝に対して交差分枝処理を行う。その方法は枝が木質化してまだ軟かい時期(7月)に、主幹から発出した側杖(新梢)を発出方向の反対側に向きを変えて湾曲させ、ひもなどで固定する。なお、数年経過すると枝が太りすぎたり、幹とくっつくことがあるので、あまり分枝を多くつけないようにし、また、切戻しなどを行い、枝が太り過ぎないようにする。 オ 立上った側杖(新梢)は伸長が停止してから水平近くまで誘引する(8月上旬〜9月上旬)。ただし、来年勇去する見込みの枝は誘引の必要がない。弱目の枝は捻枝でよい(捻枝の時期は6月下句〜7月上旬)。
片方の手で新梢の基部を固定し、もう一方の手で枝を捻りながら下方に数回下げる。この時、一部だけを捻らないで基部から枝先まで全体をもみながら捻ると、枝が折れることもなく、効果も大きい。9カ心枝にする新梢は支柱に軽く結束する(9月以降)。


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2) 2年生の剪定と管理 〔休眠期〕 ア 心枝(主幹延長技)として残す枝は前年の伸長枝のうち最も強いものを選ぶ。 イ 心枝と競合する強い側枝(主幹の太さの1/3以上のもの)や長い側枝(40〜50cm以上)は2〜3芽(5cm程度)残して剪定する。ただし、心枝の伸長が劣る場合や主幹が裸枝となり易い品種(つがる、千秋など)、側杖の長大化しやすい品種(陸奥、つがる、北斗、千秋など)の場合は長さ21cm以上のものをすべて、2〜3芽残して短さいする。 ウ 心枝は一般に先刈りしない。ただし、生育の弱い場合及び裸彼の出易い品種(つがる、千秋など)では軽く先刈りした方がよい。また、生育の旺盛な心枝の場合は先刈りしないでt枝の下方部の芽の上(側杖のはしい所)に目傷を付ける。 エ 側枝が少ない場合は望む位置の芽の上部に目傷をつける。 オ 前年に誘引からもれた枝や誘引不十分のものは水平近くまで誘引する。 カ 側枝は一般に先刈りしない。裸枝の出易い品種(つがる、千秋など)及び弱った枝の場合は先刈りした方が良い。 キ 地表から50cm以下の枝は剪去する。
〔生育期〕 ア 地表から50cm以下の芽は発芽伸長し始めたら、基部から摘み取る(5月〜7月)。 イ 最上位の芽が15〜20cm位伸びたとき、その下の1〜2芽(ときには3〜4芽)から発出した新梢は基部を少し残して剪去する(5月下旬〜6月上旬)。 ウ 心枝及び側杖の腋芽花などが結実した場合は果実を摘み取る(5〜6月)。 エ 側枝が少ない樹には、心技あるいは主幹上の側杖の足りない部位葉にビーエー液剤を散布する(6月上旬〜7月下旬、第U-73表ビーエ―液剤の使い方参照)。 オ 雪の多い地帯では、前年に雪に埋没する高さまで側杖の発出のなかった部分で、当年主幹から発出した新しい枝に対して交差分枝処理を行う(7月)。 カ 立ち上がった側枝(新梢)は伸長が停止してから水平近くまで誘引する(8月上旬〜9月上旬)。ただし、来年剪去する見込みの枝は誘引の必要がない。また、弱目の枝は捻校する(6月下旬〜7月上旬)。 キ 心枝にする新梢は支柱に軽く結束する(9月以降)。

@芽の上5mmぐらいのところに図のAのように逆U字に付けるとよい。この場合、目傷専用ナイフかU字型の彫刻刀などを用いると便利である。適当な用具がないときはナイフか鋸で図のBのように付けてもよい。 A目傷は休眠期のうちに処理した方が萌芽率が高い。
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3) 3年生の剪定と管理 この頓になると、樹の骨格がある程度できあがり、主幹の年齢(1〜3年生)ごとにそれぞれ取扱いを変える必要がある。
〔休眠期〕 〇主幹1年生部位 ア 心枝の剪定は前年と同じ要領で行う。 イ 心枝は一般に先刈りしない。ただし、裸枝の出やすい品種(つがる、千秋など)では軽く先刈りした方が良い。 〇主幹2年生部位 ア 心枝と競合する強い側杖(主幹の太さの1/3以上のもの)や長い側枝(40〜50cm以上)は2〜3芽(5cm程度)残して剪去する。ただし、心枝の伸長が劣る場合や主幹が裸枝になりやすい品種(つがる、千秋など)、側枝の長大化しやすい品種(陸奥、つがる、北斗、千秋など)の場合は長さ21cm以上のものをすべて2〜3芽残して短さいする。イ 側枝が少ない場合は望む位置の芽の上部に目傷を付ける。 イ 側枝が少ない場合は望む位置の芽の上部に目傷を付ける。 ウ 前年に誘引からもれた技や誘引不十分のものは水平近くまで誘引する エ 側枝は一般に先刈りしない。ただし、裸枝の出やすい品種(つがる、千秋など)及び弱った枝の場合は先刈りした方が良い。 〇主幹3年生部位 ア 長大化するような側枝(主幹の1/2以上の太さのもの)は2〜3芽(5cm程度)残して短さいする。太さ1/2以下の側杖で立ち気味のものは水平近く(王林は仰角20°〜30°)まで誘引するが、長さがおよそ60cm以上のものは水平以下に強めの誘引をする。 イ 地表から50cm以下の枝は剪去する。
〔生育期〕 ア 地表から50cm以下の芽は発芽伸長し始めたら、基部から摘み取る(5〜7月)。 イ 最上位の芽が10〜20cm位のびたとき、その下の1〜2芽(ときには3〜4芽)から発出した新梢は基部を少し残して剪去する(5月下旬〜6月上旬)。 ウ 樹勢が強く、側杖が数多く出ている場合は果実を多少成らせてもよいが、そうでない場合は結実した果実をすべて摘み取る(5〜6月)。 エ 立ち上がった側杖(新梢)は伸長が停止してから水平近くまで誘引する(8月上旬〜9月上旬)。ただし、来年剪去する見込みの枝は誘引の必要がない。また、弱めの枝は捻校する(6月下句〜7月上旬)。 オ 2年生側枝の主軸の延長枝と競合する枝及び直立して発出した枝のうち、20cmより長いものは2〜3葉残して短さいする(8月〜9月上旬)。 カ 心枝にする新梢は支柱に軽く結束する(9月以降)。
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4) 4〜6年生の剪定と管理 一般にこの頃になると樹形は目標とする細がた紡錘形に近づいてくるが、側枝の長大化、温み合いが目立つ時期でもある。したがって、樹冠下部の側枝の選択や取り扱いに留意する一方、樹冠上部の側杖の育成に努める。
〔休眠期〕 ア 樹高が2.5〜3.0mに達しない場合は前年と同じ要領で心枝を選択する。 イ 側技は基部まで日光が入り込めるよう、共枝や立枝は剪去する。また、間隔が狭くなってきたら適宜間引く。 ウ 主幹より太い側杖と全体のバランスを乱しそうな大きな側杖は剪去するか強い切り戻しをする。 エ 地上約1.5mより上方の側杖は下方の側杖とのバランスをよく考え、強いもの(又は強くなりそうなもの)は剪去し、短果枝(5cm以内の果枝)から発出したような弱めの枝で側杖を作る。 オ 交差分枝したもので、太りすぎた枝は弱い枝に切り戻す。その場合、一挙にできないものは2〜3年かけて徐々に切り戻す。
〔生育期〕 ア 4年生頃から頂芽には果実を成らせるが、心枝の腋芽などが結実した場合は果実を摘み取る(6月) イ 側枝から出た20cm以上の直立枝は短さいする(8月上旬〜9月上旬)。 ウ 主幹から出た新梢で側杖として使いたい枝は、捻枝(6月下旬〜7月上旬)又は誘引(8月上旬〜9月上旬)をする。 エ 着果の多い枝は吊り上げて下垂や枝折れを防ぐ(8月〜9月)。


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5) 7年生以降(樹形完成後)の剪定と管理 樹形は完成し、盛果期に入る。樹冠はややもすると大きくなり、枝の交差が著しくなるし、樹によっては衰弱するものも出てくる。このため、樹形は細がた紡錘形に整え、樹勢に注意して側枝の更新を手順よく進める。 ア 心枝は適宜切り下げ結実部位を2.5〜3m程度に維持する。 イ 側枝の長さは結実部位で85〜100cm(栽植距離4m×2mの場合)を越えないようにする。これを越えて隣接樹との交差が激しくなったら切り戻しをする。 ウ 上位(1.5m以上)の側杖が大きくなったら思い切って剪去し、弱い枝で更新していく。また、基部に更新枝があるときは適当な更新枝がある場合(第正一61図)の方法に準じて行う。 エ 側枝の共技や直立枝は剪去し、日光が基部まで射し込むよう間隔をもたせる。 オ 側枝は同一方向に重ねる場合は約50cm以上の間隔をもたせる。 カ 下方の側杖が古くなってきたら切り上げて若返りを図る。 キ 主幹より太く、大きな側枝は思い切って剪去する。剪去するときはホゾを残す。また、大きな側杖が数多くある場合は一挙に全部を剪去しないで、年次をかけて順次剪去(年に1〜2本)する。 ク 成木になったら剪定は樹勢に合わせて、弱いものは強めに、強いものは弱めに剪定する。特にジョナゴールド、つがるなどでは切詰めをていねいに行い、樹勢の衰弱を防ぐ。 ケ 樹全体が樹勢の強い場合は主幹にスコアリングをかける。また、全体的には樹勢が適正でも部分的に強い枝がある場合はその枝にスコアリングをかける。 コ 側枝が不足な樹は4月下旬頃に主幹の裸枝部に接ぎ木をして側枝の補充を図る。この場合、雪害の危険性のある部位及び樹勢の強い樹では下向きに、また、樹勢の弱い樹では上向きとする。なお、接ぎ木後の管理は通常の高接ぎに準じて行う。



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6) 成木の大きくなり過ぎた樹の取扱い ふじなどでは、樹が大きくなり過ぎて栽植距離内におさまらない園では1樹おきに間伐する。樹形としては変則主幹形又はフリースピンドル(樹幅は細がた紡錘形より広く、下方の側杖は大きめで骨組みの枝となる)に類似した形となる。その場合、ある程度骨格となる側枝を配置し、成り枝としては2次側枝を利用する。また、側杖は列方向に長く、列間方向は短かめとし、上部の枝は大きくしない。最下位側枝は地上1m以上から出たものを利用する。上下の側杖の間隔は採光条件を考え、同一方向の場合は1mくらい空ける。側枝として使用する枝に悪影響を及ぼす強勢な枝は勢去するが、一挙に剪去することは避け、樹勢が安定するように年数をかけて徐々に剪去する。なお、樹の形は列方向に広く、列間方向に狭くなるため、列間側からの強風によって倒伏しやすくなるので、丈夫な支柱を立て、幹を結束する。
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7) 高くなりすぎた樹の取扱い 高くなりすぎた樹は強風による落果、倒伏、折損などの被害が多く、また作業性が劣る。したがって、積雪の多い所を除いては、樹の高さは最上位の側枝高で2.5〜3mにおさえる。高くなり過ぎた樹を切り下げた場合は栽植距離内におさまらないことが多い。この場合、列方向の樹を1樹おきに間伐し、残った樹の側枝を列方向に広げて樹勢をコントロールしながら樹高の切り下げをはかる(「成木の大きくなりすぎた樹の取扱い」の項を参照)。 |