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5.一般栽培管理 |
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品種構成、病害虫防除、授粉、摘果、着色管理は普通栽培に準ずる。 |
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1) 土壌管理 わい化栽培の基本的な土壌管理法は樹列間牧草草生、樹冠下清耕の部分草生栽培である。 (1) 部分草生のやり方 樹冠下は清耕とし、樹列間は草生とする。刈取った草は樹冠下へ敷革する。 ア 樹列間草生 「草生栽培」の項を参照。 イ 樹冠下清耕 中耕と除草剤を利用して清耕を維持する(「除草剤の利用」の項を参照)。 (2) 有機物補給と石灰質肥料施用 毎春、樹冠下に10a当たり600kg程度の堆きゅう肥と石灰質肥料(苦土炭カルで10a当たり100kg程度)を施用し、5cm程度の深さで軽く耕起する。 (3) 乾燥防止 わい性台樹は根城が浅く、乾燥の影響を受け易いので、乾燥しやすい園地(砂礫土の見られる川原地帯や火山灰土壌、傾斜地土壌)では次の対策を行う。 ア 稲わらマルチの利用 幹を中心に2m四方に16kg(4kg/u)の稲わらをマルチする。 イ かん水 施設を利用したかん水方法としては点滴かん水方法が有利であり、節水のみならず、わい化栽培の栽植様式にマッチしたかん水方式である。かん水時期を判断する方法としては、テンシオメーターを活用するのが最も便利で確かである。テンシオメ―ターを幹から80〜100cm離れた深さ30cmの位置に埋設しておき、示度が水柱で600cm(pF2.8)を示したらかん水を始める。テンシオメーターがない場合は、干天日数を目安にして、2週間位無降雨状態が続いたらかん水する。1回のかん水量は20mm(1m2当たり20l)程度とする。 |
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2) 施肥 10a当たりの施肥量は表のとおりである。

なお、標準施肥量以外の事項は「施肥」の項を参照。 |
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3) 樹勢衰弱の対策 (1) 堆肥マルチ及び尿素の葉面散布を行う。堆肥マルチは幹を中心に1m四方(1m2)に30kg施用する。開花直前から6月中旬まで尿素の葉面散布(水10l当たり尿素20g)を3〜4回行う。 (2) 接木部位が高く、気根束の多発が懸念される樹には接木部位の10cm下の高さまで樹冠下全面に盛土をする。すでに気根束が多発して衰弱している樹には次のような対策のいずれかを講ずる。ふじの枝を穂品種と台木に橋接ぎをし、台木部分に一時的に盛土をする。ふじを接いM.26台の苗木を穂品種に寄せ接ぎする。なお、穂品種部分は樹勢が回復するまで切り返し剪定を強めに行い、着果量を減じて尿素を葉面散布する。

(3) 接目こぶ(接木部の太り)が出てきて樹勢衰弱となっている場合は、橋接ぎ(ふじの枝)や寄せ接ぎ(ふじ/M.26)をする。なお、地上部の取扱いは気根束対策に準じる。 |
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4) 収穫 わい性台樹の果実熱度は、一般に普通台樹より5〜7日くらい早まるので、4月以降まで貯蔵する場合は普通台樹よりやや早めに収穫する。 |
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5) 災害対策 (1) 霜害対策 わい化栽培は霜害に対して特に被害を受けることが予想される。降霜が予想されたら防止対策を講ずる必要がある(「災害対策」の項を参照)。 (2) 雪害対策 わい化栽培は雪害に弱いので、雪害に強い樹形を作ることが大切なばかりでなく、それぞれの園地の積雪量に応じて、積雪前又は積雪期間中の対策が必要である。 平年の最高積雪深1m以下:3年生頃までの幼木時代には枝を必ず結束する。多雪年を考慮すると交差分枝をした方がよい。 平年の最高積雪深1.5m未満:交差分枝だけで大きな被害は免れ得るが、特に雪の多い年には堀上げ、排雪、踏み固め、融雪剤散布などの対策を併せて実施する必要がある。交差分枝しない場合にはこれらの対策の必要度が一層高い。 平年の最高積雪深1.5m以上:交差分枝のほかに堀上げ、排雪、踏み固め、融雪剤散布などの総合対策がほとんど恒常的に必要である。 津軽地方のりんご園における最高積雪深は下表のとおりである。

なお、県内における積雪分布(平均最深積雪)は図のとおりである。 ◎1m以下の地域 津軽地域では平賀町、弘前市石川を中心とした平野部、県南地域では七戸町、田子町などを結ぶ線の太平洋側である。 ◎1〜1,5mの地域 五所川原市、板柳町、浪岡町の平野部、岩木山麓及び青森市内などである。 ◎1.5m以上の地域 西目屋村、弘前市弥生、鯵ケ沢町長平を結ぶ岩木山麓、浪岡町細野、浪岡ダム、吉森空港、青森市田茂木野を結ぶ八甲田山裾野地帯である。

ア 整枝剪定上の対策 (ァ) 多雪地帯での交差分枝の実施 その地域の積雪に応じ、雪中に埋没すると思われる枝について必ず交差分枝を行う。 (ィ) 主幹を直立させる。 主幹の延長部が下垂したり衰弱するのを防ぐため、生育に応じて切返しや支柱への結束を行う。 (ゥ) 側杖を短くする。 主幹から発出する側杖を長くすると折れたり裂けたりするので最下位でも85cm以下にとどめ、これ以上長くなったら切戻しをする。 (ェ) 分岐角度の広い枝を着ける。 切返し付近から発出したような分岐角度の狭い枝は雪害に弱いので分岐角度の広い枝を着ける。 (ォ) 側杖の幅を広げない。 側枝からの分枝を多くして横幅を広げると、雪害を受けやすいので分枝を少なくし、しかも大きくしない。 (ヵ) 側杖の数が少ないと雪害を受けやすいので、目標の側杖数を確保する。 イ 積雪前の対策
(ァ) 幼木の結束 わら、縄などで2〜3か所支柱を中心に結束する。結束もれのないように注意する。 (ィ) 成木の枝吊り 枝が固くなって結束ができない場合は枝吊りをする。ただし、枝の中央部で水平角度に吊ると吊ったところから折れるので、やや先の部分を枝先が上向きになる程度まで吊り上げる。 ウ 積雪期間中の対策 (ァ) 融雪の促進および沈降力の軽減 2月上旬から3月上旬にかけて2〜3回にわたり、晴天の日を選んで融雪剤を散布する。 (ィ) 枝の掘り上げ 埋没した枝を雪中から掘り上げたり、溝切りなどを行う。 (ゥ) 雪の踏み固め 積雪深が70〜80cmくらいになったら下枝部分の雪を踏み固め、その後90cmくらいになったら再び踏み固める。 (3) 風害対策 わい化栽培は風害に弱く、昭和56年台風15号及び平成3年台風19号により大きな被害が見られた。開園に当たっては防風林又は防風垣の設置が基本となるが、開園後であってもこれら防風施設の導入が必要であり、また次の点にも留意する。 ア 主幹と支柱の結束は耐久力のある材料で行い、必ず2〜3か所結束する。結束材料は毎年点検し、弱くなったものは取り替える。 イ 樹が大きくなり、結実が多くなると風圧に耐えきれなくなるので、老朽化した支柱は取り替える。また、鋼管支柱ではメッキ塗料がとれたり被覆材が傷ついたりして強度、耐久性が弱くなるので随時点検し、補修剤を塗るか防蝕テープを巻く。 ウ 現在使用している支柱の打ち込みが浅く、ぐらつく場合は再度打ち込むか、打ち込みが困難な場合は樹列に沿って支柱の頂部に張線し、さらに横ぶれを防止するために直角に交差するように張線し倒伏防止を行う エ 主幹上部の側杖を大きくせず、樹高を3mに抑える。 (4) 野ネズミ、野ウサギ対策 とくに山間部ではこれらの被害は深刻である。野ネズミ対策としては殺そ剤や捕獲器による密度の低下、幹に忌避剤の塗布や金網などの巻きつけ草種の吟味と草の刈り取り、晩秋の地際部の清耕など総合的な防除対策が必要である。野ウサギに対しては開園時に園地の外周を金網で囲めば被害はないが、開園後は絶えず金網を点検して破損箇所は補修する(「鳥獣害対策」の項を参照)。 |