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目次
普通栽培
1.月別主要作業
2.品種と栽植
3.整枝剪定
4.主要病害の防除
5.主要害虫の防除
6.農薬の安全使用
7.スピードスプレーヤによる
 防除効果をあげるために
8.授粉
9.摘花・摘果
10.袋かけと除袋
11.着色手入れと落果防止
12.収穫と貯蔵
13.土壌改良
14.水田転換園の土壌改良対策
15.土壊管理
16.施肥
17.生理障害対策
18.災害対策
19.鳥獣害対策
わいか栽培
1.わい化の目標
2.栽植までの準備
3.栽植
4.整枝勢定
5.一般栽培管理

17.生理障害対策
1) ビ夕―ピット対策
ビターピットは窒素など施肥量が多すぎたりあるいは若木などの樹勢の強い樹に発生が多い。雨が少なく、8〜9月に多雨な年にも発生が多い高接更新で強剪定した樹、気象的にみると6〜7月にビターピットは果実と葉、枝との間にカルシウムの競奪が起こり発生するので、樹勢を落ち着かせて果実に十分カルシウムを供給することが大切である。

(1) 症状
収穫期から貯蔵中の果実に発生する。発生部位はほとんど果実の赤道面より下方であり、赤色品種では暗赤色、黄色品種では暗緑色のややくぼんだ斑点として現れる。被害部直下の果肉は褐変し、コルク状となっている。現在の主な栽培品種の中では王林、陸奥、北斗、ジョナゴールド等に発生が多い。

(2) 防止対策
ア 対策の基本的な方針
ビ夕ーピットの発生しやすい条件からみて、樹勢を落ち着かせることが根本的な対策となるので次のような栽培管理を行う。
(ァ) ビ夕ーピットの発生する園地では2〜3年無肥料とする。
(ィ) 極端な強勢定、強摘果など樹勢を強め、大玉をとるような栽培方法を避ける。
(ゥ) 陸奥、王林などは収穫が早すぎるとビ夕ーピットの発生が多くなるので適期に収穫する。
イ カルシウム剤の果面散布
(ァ) カルシウム剤の種類と使用方法



@ カルクロン
つがるに対しては6月中旬から7月下句まで4〜5回散布する。その他の品種に対しては、無袋では6月上旬頃から7月下句まで10日以上の間隔で4〜5回散布する。有袋では6月上旬頃から袋かけするまでに10日以上の間隔で散布する。その際、薬害防止のために、クレフノン又はアプロンを加用する。8月以降に散布すると果実と葉に薬害の恐れがあるので使用しない。
A スイカル
無袋の果実へ7月下旬から9月中旬までの間に、10日以上の間隔で散布する。散布回数は3〜5回とし、樹勢の強い樹や玉伸びの旺盛な場合には散布回数を5回とする。
B セルバイン
6月上旬から9月上旬までの間に、10日以上の間隔で3〜5回散布する。
(ィ) カルシウム剤散布上の注意
@ いずれのカルシウム剤も果実に直接付着しないと効果がない。
A 樹勢の弱い樹に対しては葉に薬害発生の恐れがあるので使月しない。
B 高温時あるいは干ばつ時の散布は、葉縁褐変などの薬害発生の恐れがあるので避ける。
C 散布は原則として単用で行う。
2) コルクスポット対策
一般に大きい果実に発生が多く、高接樹、若木など樹勢の強いものに多発する。高接樹では、最初の結実から数年間は発生が多く、樹勢が落ち着いてくると減少する。

(1) 症状
コルクスポットとビターピットは症状的に似ているが、発生時期、症状の発生部位などから判別できる。コルクスポットは8月頃から症状を示し、果皮にビターピットよりも大きめのあばた状の斑点と、果肉内部にコルク化した斑点状の組織を生じる。発生部位はビターピットと異なり果実全体に発生する。セミやカメムシなどの虫害によってもコルクスポットと似た症状を示すが、これらは果皮斑点部中央には吸汁孔がある。

(2) 防止対策
発生要因はビターピットと共通することが多く、栽培上、次の点に注意して被害の軽減を図る。
ア 強剪定、強摘果を避け、大玉にならないようにする。
イ 発生樹は2〜3年無肥料とする。
3) 縮果病(ホウ素欠乏)対策
縮果病は土壌中のホウ素が流亡又は不溶化することによって発生するため、有効土層の浅い砂傑士壌あるいは傾斜地の上部など土壌の乾燥しやすいところで発生が多い。また、幼果期に雨が少なく、高温で土壌の乾燥が続く年にも発生が多い。品種ではつがる、王林、ふじ、ジョナゴールドに発生が多い。

(1) 症状
ア 縮果病は幼果期(6月上〜中旬)に果実の赤道部からつゆを出したり、水浸状の斑点が現れる。このような果実は内部に赤褐色のコルク化した組織が点在する。また、外観が正常にもかかわらず果実内にコルク化した組織が見られることがある。果実の発育が進むにつれて、果皮は赤褐色ないし暗褐色に変化してサビ状になり、果実内部は水浸状の斑点が消失してコルク化した組織だけが残る。このコルク化した組織は発育が止まるので果実はゆがんで奇形となる(縮果症状)。また、症状が激しい場合は果皮に粗皮状の亀裂が生じ、時には亀裂が果心部まで及ぶことがある。
イ ホウ素欠乏が激しくなると新梢の生育が低下して先端が枯死したり、葉が柳のように細長く密生し、葉の縁がまくれる。また、樹皮は小隆起や亀裂を生じ、内部に黒点状の枯死部ができ、粗皮病と著しく類似した症状を示す。
ウ 縮果病とよく似た症状にウイルスによるサビ果又は奇形果があるが、これは果実内部にコルク化した組織がない。また、スターキングの幼果期に果実表面から水滴状の粘ちようなつゆ(ソルビト一ル)を分泌することがあるが、果実内にコルク化した組織のない場合はホウ素欠乏でない。

(2) 防止対策
ア 縮果病は発生初期にホウ素の葉面散布を行うと症状の進行を防止できるので、幼果に初期症状がみられたら、直ちに葉面散布用ホウ素肥料(ソリボー又はホウ酸)を1,000倍(水100l当たり100g)の濃度で7〜10日おきに2回散市する。

4) 粗皮病対策
粗皮病は土壌の酸性化及び排水不良により可溶化したマンガンをリンゴ樹が多量に吸収することによって発生する。したがって、この防止には酸性土壌の改良や排水を良くして土壌中のマンガンが樹に吸収されにくい形に変えてやることが大切である。

(1) 症状
樹皮の表面に発疹小隆起が生じ、次第にひび割れあるいは年輪状の亀裂となったり、表層が陥没したりする。初期症状は1年枝の先端に現れることが多い。また、皮部を削ると暗褐色のネクロシス(壊死斑点)がみられる。症状が進むと新梢の伸びが劣り、先粘れが起こる。ふじで発生が多い

(2) 発生樹の治療
石灰質肥料の施用によって強酸性土壌を改良することが対策の基本である。ただし、排水不良園では暗きょ等により土壌から過剰の水を排除しなければ効果が劣る。粗皮病の回復には数年を必要とし、症状の激しいものはさらに回復しにくい。したがって、治療しようとする樹の品種、樹齢を考慮し、更新の方が有利な場合には肥培の苗木を用意して適当な時期に植え替える。また、治療対策は粗皮症状の軽いうちにできるだけ早く実施する。
ア 石灰の注入
粗皮病発生樹に普通台成木1本当たり40〜60kgの苦土石灰を樹冠下の土壌に注入する。注入方法の詳細は「酸性土壌の改良」の項を参照。
イ石灰の注入ができない場合には次のように表層施用を行う。普通台成木1本当たり40〜60kgの苦土石灰を、晩秋に樹冠下の広い範囲に施用し、根をあまり切らないように注意しながら、できるだけ良く土壌と混合する。翌年の晩秋にも前年と同様、20〜40kgの苦土石灰を施用する(施用方法の詳細は「酸性土壌の改良」の項を参照)。
ウ 管理上の注意
(ァ) 排水不良園では暗きょ排水などにより排水をよくする(「土壌改良」の項を参照)。乾燥地では敷革を行い土壌の乾燥を防ぐ。
(ィ) 先枯や亀裂の著しい枝は次第に切り落とし、結実母枝を更新していく。また、一般に剪定はやや強めに行う。
(ゥ) 発生樹はできるだけ薄成りにして木に負担をかけない。
(エ) 施肥量の低減を図り、また、生理的酸性肥料を使用しないなど土壌酸性化の防止に努める(「施肥」の項を参照)。

(3) 予防対策
新植の場合は「新植及び改植時の土壌改良」の項を参照。その他の予防対策は「酸性土壌の改良」の項を参照。
5) 苦土欠乏対策
この欠乏の原因は、長期にわたり土壌から苦土が溶脱するなど土壌の悪化、強酸性化などによるものである。防止対策は土壌酸性化防止対策と共通する点が多いので、酸性土壌改良対策の中に含めて計画し、実行することが望ましい。

(1) 症状
葉の褐変と落葉が主な症状である。褐変は葉脈間あるいは葉縁にあらわれ、広がるにつれて落葉する。褐変及び落葉は基部葉から頂部葉へと規則正しく進行することが多いが、基部葉より上の葉から発生することもある。発症時期は開花期から落花後1か月位までの間に一時的に果そう葉を中心に発生することがあるが、本格的には8月以降である。

(2) 防止対策
ア 対策の基本的な方針
苦土肥料の施用と硫酸マグネシウムの葉面散布の二つの方法がある。苦土肥料の施用は根本的な対策であるが、少量を毎年施用したのでは効果の現れるのが遅いので、落葉の激しい木には重点的に1樹当たり苦土成分で5〜7kgの苦土肥料を施用して回復を図り、それでもなお、夏に欠乏症の発生がみられるようであったら、直ちに葉面散布を開始して進行を防ぐ。
イ 苦土肥料の施用
(ァ) 褐変と落葉の激しい樹に対しては、成木1樹当たり苦土消石灰(苦土18%)25〜35kg、苦土炭酸石灰(苦土10%)50〜70kg、又は水酸化苦土(苦土60%)8〜12kgを樹冠下に施用する。
(ィ) これらの苦土成分はやや遅効性であるから、その年に発生する欠乏を完全に防ぐためには前年の晩秋に施用する。この場合、樹冠下に施用後、耕うん機又は鍬などで軽く耕うんし、土壌と混合した方がよい。しかし、できるだけ根を切らないようにする。
ウ 硫酸マグネシウムの葉面散布
(ァ) 使用する硫酸マグネシウムと散布濃度
葉面散布用として精製された硫酸マグネシウムを表のように使用する。



(ィ) 散布時期と回数
散布は苦土欠乏の症状が見えだしたらすぐに始める。かなり落葉の激しい場合でも単用で7〜10日おきに3〜4回散布すると防止できる。落花後1か月までの間に一時的に発生する落葉に対しては1〜2回の散布で十分防止できる。
(ゥ) 調合上の注意
硫酸マグネシウムを調合する時、タンク底部で固結する恐れがあるので、大量の水をよくかき混ぜながら徐々に硫酸マグネシウムを加える。
(ェ) 散布上の注意
過剰散布、朝晩のつゆのあるときの散布は避ける。
(ォ) その他の管理
生理的酸性肥料の使用を避け、また、多肥を避ける。

6) 生理障害に対する葉・果面散布剤の使用法
葉・果面散布剤の使用方法及び注意点は表のとおりである。