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目次
普通栽培
1.月別主要作業
2.品種と栽植
3.整枝剪定
4.主要病害の防除
5.主要害虫の防除
6.農薬の安全使用
7.スピードスプレーヤによる
 防除効果をあげるために
8.授粉
9.摘花・摘果
10.袋かけと除袋
11.着色手入れと落果防止
12.収穫と貯蔵
13.土壌改良
14.水田転換園の土壌改良対策
15.土壊管理
16.施肥
17.生理障害対策
18.災害対策
19.鳥獣害対策
わいか栽培
1.わい化の目標
2.栽植までの準備
3.栽植
4.整枝勢定
5.一般栽培管理

18.災害対策
1) 風害対策
(1) 事前対策
ア 防風網による風害防止
防風施設は高さ5〜5.5mで最大瞬間風速30m/秒以上にも耐え、スピードスプレーヤの走行や他の作業に支障をきたさないものが望ましい。防風効果は網の目の大きさによってことなるが、4mm目の寒冷紗を使用すると、風下方向に防風施設の高さの5〜7倍の距離まで有効である。防風ネットは事前に点検し、損傷しているネットは耐久力の強いものに替える。防風施設は信頼のおける業者に依頼する。
イ 防風林による風害防止
風害による落果は防風林を植えることによってかなり防げる。防風林としてはイタリアンポプラ、ハンノキ、カラマツ、マツダナヤナギ(アコ一夕)などがある。イタリアンポプラは落葉が早いので、早生種及び中生種の園に栽植し、晩生種の園にはハンノキ、カラマツ、マツダナヤナギを栽植する。なお、冬期間に寒風害による枝の枯込みの見られる地帯では、黒松、欧州赤松等の常緑防風樹を栽植する。
(ァ) イタリアンポプラ、カラマツ、マツダナヤナギ(アコ一夕)の繁殖方法
@ 挿木で繁殖する。挿木時期は温室であればいつでもよいが、露地挿しでは4月〜6月中旬が良い。
A 挿穂は長さ20cm程度とし、挿床に1/2ほど挿す。なお、マツダナヤナギは挿穂の基部を斜めに切る。
B 挿床の土質は、砂まじりで、水はけのよい土壌が良い。
C 挿木後は随時かん水を行う。活着後は、伸長を促すために、肥料を施用する。
(ィ) ハンノキの繁殖方法
@ ハンノキは挿木で繁殖しないので、種子を播種する。
A 4月下旬から5月上旬に、1m2当たり堆きゅう肥2kg、窒素30g、リン酸10g、カリ10gを施用した苗床を深めに耕起する。
B 播種量は1m2当たり10〜20gとし、発芽当初から5cm伸びるまで晴天時は日覆いをする。
(ゥ) 植え付けと管理
@ 防風林はスピードスプレーヤの走行に支障をきたさない程度の距離を設けて栽植する。
A 早春又は晩秋にイタリアンポプラ及びカラマツは、株間0.5〜1.0m間隔で、1条あるいは2条植えとし、また、マツダナヤナギは株間1.0m間隔で1条植えとし、深さ20cm位にやや深植えとする。
B 植え付け後は横枝を張らせる必要があるので、やや強めに切り返し剪定を行う。また、植え付け2年目からは、春又は秋に先刈りを行うとともに、横枝は10cm程度に切りつめ、常に新しい枝で防風垣を構成するようにする。
C 防風林の高さは剪定時で5mとする。
D 防風林に隣接するりんご樹の品種は早生種あるいは黄色品種とする。
E ハンノキ、イタリアンポプラ、マツダナヤナギはハマキムシ類の発生が見られることがあるので注意する。
ウ 樹園地の充実
欠木などで園地に空地があると風の通り道となって被害が激増するので、補植などにより樹園地の充実をはかる。



エ 応急対策
報道機関の情報から台風の進路や通過時刻を予知し、次の応急対策を講じて被害の軽減に努める。
(ァ) 紋羽病の被害樹や根の浅い樹は、支柱で幹や主枝をささえて倒伏を防止する。
(ィ) 幼木は倒伏しやすいから、丈夫な支柱をたててなわでくくる。
(ゥ) 幹、主枝等に空洞が生じているものは、裂傷や損傷の被害がでやすいので支柱で支え、ボルト、かすがい、なわ等を用いて補強する。
(ェ) 落下りんごの傷害を少なくするために、樹冠下に敷わらをする。傾斜地では、更に等高線に沿ってわらで垣をつくる。
(2) 被害後の対策
ア 樹の処理
(ァ) 倒木はできるだけ早く起こして支柱で支える。その際、健全な根を切らないように慎重に行う。すぐに起こせない場合は、露出した根に土をかけるなどして乾かさないようにする。
(ィ) 倒伏被害後、数日のうちに大部分の葉が褐変した樹は、ほとんど回復の見込みがないので伐採し、植え直したほうがよい。
(ゥ) およそ半分以上の根が切断する被害を受けると、翌年以降樹勢が衰弱するので、その程度に応じて着果程度を軽くし、著しく衰弱した木では果実は成らせない。
(ェ) 枝が裂けた場合は、結果母枝を減らして負担を軽くし、裂開部を接着させるため、なわを巻くとか、かすがいを打ちつけてかたく縛る。また、接着不能と考えられるのは、早く切り落として、障害部をなめらかにし、カルス形成を促進するバッチレートを塗る。
(ォ) 風害による根痛み樹は翌年の摘果時の果柄が落ち難く、果柄を通し果台から発病する枝腐らんが多くなることがあるので、6月下旬のトップジンM水和剤1,500倍又はベンレート水和剤3,000倍は必ず加用する。
イ 果実の処理
落果は、傷の程度でよりわけ、それぞれの用途に応じて処分する。傷の大きいものは加工用に向ける。
2) 水害対策
(1) 河川流域で冠水した場合
ア 園地に停滞している水は一刻も早く排除する。
イ 土壌中の過剰水の排除は、排水溝やタコツボに集め、ポンプでくみあげる。
ウ 土砂の沈積が激しい場合は根もとの土砂を取り除く。苗木は土砂の沈積により根際部が腐敗するので、堆積土が10cm程度でも根際部を排土する。また、成木園でも粘土が厚く堆積(約20cm以上)すると、根に障害がでやすいので、幹のまわり直径2m程度排土する。
エ 土が乾燥したら、できるだけ耕転する。
オ できるだけ早く枝や葉、花または果実にからみついたゴミを取り除きさらに泥を清水で洗い落として防除暦で示された基準薬剤を散布する。(有袋果については除袋してこれらの管理を行う。)
カ 倒木は早く起こして支柱をたて結束する。
キ 堆積土があった園地では、翌年の施肥は、できるだけ控え目にした方がよい。
(2) 傾斜地で鉄砲水の被害を受けた場合
ア 農道の復旧、スピードスプレーヤ通路の整備を急ぐ。また、破損した給排水のパイプを早く補修し、防除用水の確保に努める。
イ 園地内に流入した石れきは、作業に支障をきたすから、できるだけ早く排除する。また、排水路を復旧して園地に水の停滞が生じないようにする。
ウ 石れきが流入した園地では、地際部の樹皮を点検し、傷んでいたら盛土したり、カルス形成を促進するバッチレートを塗布して保護する。
3) 雪害対策
(1) 根雪前の対策
ア 苗木は支柱をたてて、枝をなわで結束する。
イ 成木では、雪害をうけそうな枝には、支柱を入れる。また、空洞や裂開の生じている樹には、かすがいあるいはボルトを用いて補強する。
ウ 不用な枝は大枝単位に剪去する。特に、うでが長く、はげあがった枝を主体に剪去する。切口の凍害を防ぐために、基部を30cmくらい残して剪去し、翌春に切り直す。
(2) 積雪期間中の対策
ア 大雪の際は、まだ雪の新しく軽いうちに、樹の雪降ろしを行う。
イ 雪中の枝先は、雪の新しいうちに抜き上げる。
ウ 雪に埋もれた下枝は、融雪期に入ったら随時園地を見回り、枝を引き上げる。また、除去してもよい枝で雪の沈下によって折れたり、発出部が裂けたりするおそれがあるものは、早めに切りとるが、切口の凍害を防ぐために、基部30cmくらい残して剪去し、残した枝は春になってから基部から切り落とす。
(3) 融雪促進剤(材)の散布
融雪促進剤を散布すると、種類、散布量、散布時期で多少異なるが、消雪が7〜10日早まる。
ア 融雪促進剤の散布時期は3月上旬または中旬。
イ 融雪促進剤としては、次の表にあげたもののほか、各種市販されているが、選択する場合は黒色が濃く、雪にすぐ浸透しないで雪上に残存する期間が長いこと、入手しやすく、安価で散布作業が容易なことなどの条件を備えたものが望ましい。



(4) 被害樹の処置
ア 樹皮が2/3以上失われている場合は、ゆ合の見込みがないので剪去して傷口にバッチレートを塗る。また、ゆ合可能な枝は、傷口を密着させて支柱で補強する。
イ 被害を受けた枝は枝量を少なめにし、損傷部に橋接ぎを行う。
ウ 樹形を損ねた樹では、徒長枝の利用、高接ぎなどで樹形の立て直しを図る。
4) ひよう害対策
(1) 傷害のはなはだしい果実は、途中で腐敗して落果するか、あるいは奇形となることから、来生の生産確保のため早く摘果する。
(2) 被害の軽いもの(径4mm位までのもの)は、樹の負担力の範囲内でなるべく残すようにする。
(3)被害園でその後の管理を怠ると次年度の生産にも影響し、また病害虫のまん延を助長するから、周到な管理を継続する。
5) 霜害対策
(1) 事前対策
ア 霜害危険地の回避
霜害を受けやすい地形として、谷間、くば地、傾斜地のすそ部などのように冷気のたまりやすい場所があげられるので、この地形への栽植は控えるが、やむを得ず栽植した場合は防止対策を必ず行う。
イ りんご園の環境整備
(ァ) 寒気流の流入を防止するため、園地の周囲に防霜林あるいは防霜垣を設ける。
(ィ) 傾斜地に新種する場合は傾斜に沿った列植とする。
(2) 防止対策
霜害が予想される場合には気象台から霜注意報が発令され、ラジオ、テレビおよび各市町村の有線を通して放送されるので、これらの情報に注意する。一般に降霜は晴天無風で、前日午後7時の気温が6℃以下のときに危険性が高い。花芽の耐凍性は発芽とともに減少し、展葉期で-2℃、花らい着色期で-1℃になると被害が出始める。
ア 燃焼法による防止
(ァ) A重油
@ 4lオイル缶、または18l缶及び20l缶を利用すると良い。
A 1缶当たりの使用量は、オイル缶では4lとし、18l缶及び20l缶では6lとする。
B A重油の10a当たりの火点数は、オイル缶では30缶以上、18l缶及び20l缶では20缶以上とする。
C 1時間当たりの燃焼量は、18l缶及び20l缶が約3l、オイル缶が約1lである。
(ィ) 霜カット
おがくずとA重油を2:1(容量)の割合で混ぜたものをlkgずつ袋に詰めて10a当たり40〜60個配置する。



(ゥ) 実施上の留意点
@ 火点の配置・・・園地内の温度が一様になるように園地の周辺部を多めにし、中央部をまばらにする。また微風があると温度のあがる場所が風下にずれるので、風上側に多めに配置し、風下側をまばらにする。なお、火点はいずれの場合でも樹間に配置する。
A 点火時期・方法・・・あらかじめ園地に温度計を地表1.5m位の高さに設置し、その温度計の示度が展葉期で-2℃、花らい着色期で-1℃より、それぞれ0.5〜1.0℃高い時点で点火する。点火方法は、オイル缶または石油缶を使用の場合は、A重油が入った缶に少量のガソリンを入れてトーチランプまたは点火棒(木、鉄パイプ、針金などにポロ布を巻き付けて重油をしみこませたもの)で点火する。霜カットを使用の場合は、点火棒・ライター等で点火する。
B 届け出・・・燃焼法を使用する場合は、あらかじめ所轄の消防署に想定された期間等を届け出なければならない。
イ 防霜ファンによる防止
降霜時は放射冷却による気温の逆転現象が生じ、地表面より地上5〜10mの気温が高くなるのでファンを利用して地上8mの空気を樹体に吹き付け霜害を回避する。期待できる昇温効果は1〜2℃である。



(ァ) 一般的には地上1.5mに温度検知器を設置し、ファンの始動温度を2℃に設定する。できるなら自園の危険か所をとらえて設置することが望ましい。
(ィ) 寒気を伴ったときや著しく低温になったときは、防止効果が小さいので、燃焼法を併用する。
ウ スプリンクラー散水による方法(氷結法)
この方法は現在のところ各壇霜害防止法の中で、その効果は安定している。昭和50年4月22日〜23日の降霜時に畑園試は場で調査した結果では-5.4℃の低温時でも、-0.2℃を保持できた。このことは、スプリンクラー散水による昇温効果の顕著なことを示している。



(ァ) スプリンクラーの配置個数は5〜6基とし、各りんご樹で散水されない枝がないように配置することが肝要である。また、ライザーの高さは4m位とする。
(ィ) 散水量は1時間に4mm以上必要で、10a当たりの要水量は3時間散水するとすれば約12トンである。
(ゥ) ノズルの回転数は1分間に1回以上とする。
(ェ) 散水開始は、気温が-1℃になった時とする。また、散水停止は気温が0℃以上になった時とする。
(3) 事後対策
ア 霜害にあった時は、結実量を確保するために、人工授粉を必ず行う。この場合は、おしべが被害を受けても、めしべが正常か多少の被害であれば結実が期待できるので被害の内容を確かめて授粉する。
イ 摘果の際、障害果でも中心果の被害がごく軽微(果柄のキズなど)であれば側果を残すよりは中心果を残すほうがよい。
ウ 被害が著しい場合でも、側果を利用したり、比較的障害の少ない果実を着果させ、結実確保に努める。
エ 着果量の不足のものについては障害が確認できる時期まで仕上げ摘果を遅らせ、追肥を控える。
オ 霜害で葉の被害が著しい樹では着果量を少なめにし、樹勢の回復をはかるために落花後から10日毎に尿素の葉面散布を3回行う。散布濃度は500倍とする。