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6.農薬の安全使用 |
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農薬は農作物の病害虫や雑草を防除したり、あるいは農作物の生理機能の増進。抑制に用いられる薬剤である。目的とする病害虫などにだけ作用し、人間や有用動植物に害がないことが理想であるが、人間や家畜に対してもなんらかの影響を及ぼす農薬も少なくない。したがって、農薬を使用する際には@使用者に対する安全、A作物に対する安全(薬害)、B農産物に対する安全(残留農薬)、C周辺環境に対する安全について十分配慮する必要がある。そのためには、使用する農薬のラベルに表示された安全使用上の注意を守り、使用する場所、目的に適した農薬の種類・剤型・散布方法などを選ぶのはもちろんであるが、場所によっては散布前に周辺住民との話し合いをするなどして、理解を求めておくことも大切である。 |
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1) 農薬の安全性評価 農衆の安全性評価は農薬の登録検査を通して行なわれる。農薬の登録を受けようとする者は、農林水産大臣に対し、有効成分の種類と含有量、適用病害虫・雑草・害鳥獣、使用目的と使用方法、その他の所定事項を記載した農薬登録申請書、薬効、薬害、毒性及び残留性などに関する試験成績資料並びに農薬の見本を提出して、登録申請をすることになっている。検査される主な項目は、@品質、A薬効・薬害、B毒性、C残留性、D水産動物に対する毒性などである。これらの検査を通して、使用者、作物、農産物はもちろん、周辺環境に対しても安全な使用方法、使用回数、使用時期、使用濃度などが決められ、登録が行なわれる。 |
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2) 農薬危害防止 (1) 使用者に対する安全 ア 散布前の注意事項 散布前には目的にあった農薬を選び、ラベルに表示されている注意事項を読み、濃度・量を計算し、散布器具の準備。調整などをし、防除衣、保護具、その他散布に必要なものを準備をする。事前に体調を整え、少しでも体調の悪い時、特に空腹、疲労、睡眠不足、外傷がある時、病後などには散布に従事しない。 イ 散布中の注意事項 散布液の調製時には濃厚な農薬に触れる機会が多いので、直接触れたり、目に入ったり、吸い込んだりしないように、手袋、眼鏡、マスクなどの保護具を着用する。散布作業は原則として暑い日中を避け、涼しい時間帯に行い、また長時間の散布を避ける。散布に当たっては周辺の環境にも十分注意し、関係者以外の人や家畜が近くにいないことを確かめる。農薬が飛散すると、人家や家畜などに思わぬ被害を与えることがあるので、散布中は風向きに注意し、風が強くなったときは中止する。 ウ 農薬散布後の注意事項 使用後の農薬の後始末を確実に行う。残った薬剤はきちんと封をして決められた保管場所にしまう。防除器具は次の散布に備えてきれいに洗い、その洗浄液や残った散布液は池や川に流入させない。空になったびんや袋は適正に処分する。後片付けが終わったら、手や露出部を石鹸でよく洗い、うがい、洗眼をしてから風呂に入って、全身を良く洗う。着替えた防除衣などは、他の洗濯物などとは区別して洗う。農薬を散布した日は飲酒を控え、早く寝て、体力の回復をはかる。万一身体に異常を感じたときは、すぐ医者の診察を受ける。 (2) 作物に対する安全 農薬を誤った種類・量・時期・品種・条件などで使用すると、目的とは逆に農作物に薬害を発生する場合がある。農薬の使用に当たってわからないことがあれば、病害虫防除室などの指導員に相談するなどして、薬害を起こさないようにする。 (3) 農産物に対する安全 すべての農薬には適正使用基準が決められている。この適正使用基準を守って農薬を使用すれば、農産物は残留農薬に関して安全である。適正使用基準は各々の農薬が、農産物の収穫何日前まで(使用時期)何回使用しても良いか(総使用回数)で表示されている。 (4) 周辺環境に対する安全 農薬を散布するときには、ほかに迷惑を掛けないように心掛けることが大切である。付近に養魚池、タバコ畑、桑畑、採草地、養蜂場、公園、住宅地などがある場合、それらに農薬が飛散しないよう注意する。魚毒性の強い農薬を使用する場合は、河川への農薬飛散、防除器具の洗浄液や残った散布液の流入などのないよう注意する。ピレスロイド剤は蚕に対する悪影響が特に大きいので桑畑からおおむね500m以内では使用しない。 |
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3) その他の注意 (1) 農薬のラベルの表示、内容について 農薬のラベルには成分や毒性の表示、使用可能な作物、適用病害虫・雑草・害鳥獣の名称、使用濃度や使用量、使用時期、使用回数、使用上の注意事項など、その農薬を安全に使う場合に必要で不可欠の事項が記載されている。このラベルも新しい登録が認可されたり、3年ごとの再登録審査で、記載事項が変更になることもある。初めての農薬を使う場合はもちろん、使い慣れた農薬でも使用に先立って、必ずラベルを読み返す習慣を付けることが大切である。 (2) 無登録農薬の使用禁止 病害虫の防除や除草、植物の生育調節などの目的で使用できる農薬は登録を認められたものに限られている。農薬として登録されていない薬剤や登録切れの薬剤などいわゆる無登録農薬は使用することができない。また、農薬として登録されている薬剤でも適正使用基準を守らないと、農産物に基準以上の農薬が検出される可能性がある。安心して食べられる農産物を生産するために、農薬は正しく使うことが大切である。 |